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日本国旗 ユリキータの日本の郷土料理 食べ歩き

宍道湖七珍 ~「川京」松江にて

宍道湖七珍=しんじこしっちん、と読むそうよ。ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)が住んでいた松江は、江戸の風情を残した上品な城下町。18世紀にここを統治していた「松平不昧公」という、茶道に通じた風流な殿様がいて、その名残が今も受け継がれているんですって。なるほど、おいしい名物料理がいろいろあるようね。

宍道湖は松江の西に広がる気水湖(真水と海水が混ざっている湖)で、ここで獲れる魚介類はとってもおいしいと評判。いうならば、松江は、昔ながらの日本のグルメタウンというわけ。

七珍がそろうのは冬なのだけれど、訪れたのが11月だったので、出回っていたのは、残念ながら、ウナギ、アマサギ、もろげ海老、シジミ、スズキの五珍だけ。残りはコイと白魚(しらうお)だそうよ。

シジミは、東京あたりでは、ドブ臭くて身がおいしくないけれど、宍道湖のシジミには驚き。身が大きくて、しかもおいしいの。宍道湖では、こんな貝が放っておいてもどんどんわいてくるそうよ。それに、ウナギは、たとえ養殖でも、宍道湖のいけすに放しておくだけで身がしまっておいしくなるんですって。自然の威力ってすごいわね。
「川京」のおかみさん。アグネス・チャン似の美しい方。 ウナギのタタキ。「川京」のオリジナル料理。これを目当てに遠方からやってくるお客さんも多いそう。 公魚(アマサギ)のから揚げ。秋から早春にかけて食べられる。 もろげ海老のから揚げ。貴重な海老。
シジミ。「おたすけシジミ」というオリジナル・メニュー。

残り汁はスープにしてくれる。肝臓によいという。
"出世魚"スズキの奉書焼き。出世魚のスズキ。漁師の食べ物だったものを、松平不昧公に献上するときに、失礼に当たらないように奉書に包んだのが始まりとか。松江の名物料理のひとつ。 スズキの奉書焼きの紙を開けたところ。 サルボウ貝。お通し。貴重な貝。(これは七珍ではない)店には、出雲の地酒もいろいろそろっている。

川京

川京
 松江市内(松江シティホテルの近く)

お店のマスター(大将)が研究を重ねた、創作料理を取り入れた松江の郷土料理の店。上記の料理すべてと地酒を含めて1人4000円程度と、お手ごろ価格。30年以上も価格を据え置いた料理もあるというから、実に良心的。

優しいおかみさんのもてなしとともに、ユニークな大将の毎夜の口上は、なくてはならないお店の名物。1人で行っても、カウンター席でお店の人やお客同士が仲良くなれそうな、家庭的で、あたたかい雰囲気。全国に常連さんが多い。オーストラリアが出版元の"Lonely Planet"をはじめ、国内外のガイドブックにも紹介されている。

「こんなお店は全国的にも珍しい」とは、さる食道楽の老紳士。郷土料理、大切にしていきたいものですね。

profile 著者:青木ゆり子 Author: Yurico Aoki

e-food.jp代表、各国・郷土料理研究家、全日本司厨士協会会員 調理師。主な著書:図鑑NEOまどあけずかん「せかいのりょうり」監修(小学館 2021)、「世界の郷土料理事典」(誠文堂新光社 2020)。


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