2006年12月22日

1960年代後半から70年代にかけて、アメリカのタイムライフ社(Time Life)が出版し、現在は絶版となっている「世界の料理」(英題"Foods of the World")の日本語版シリーズ全23巻を、ほほ集め終えることができました。
漫画家の弘兼憲史さんをはじめ、愛読していた人も多いというこのシリーズは、豊富な写真・レシピとともに、世界各地の文化や歴史や地理、民族性から食べ物をわかりやすく解説した、料理ファン垂涎の本。コストと一流記者の才能と手間をふんだんに注ぎ込んだ意欲が察せられ、出版から40年近い歳月が過ぎた今も、貴重な資料となりえる名著です。
本は長い経年と、アメリカで出版されたことから、韓国料理の記述がすっぽり抜けていたり、タイやベトナムなどの東南アジアが「太平洋・東南アジア」として合体して深く掘り下げられていなかったり、また、現地取材先が上流階級の家庭のケースがままあって、庶民の食べ物はちょっと違うのでは?と思う部分があったりと、古さや偏りは多少、見受けられます。
しかしながら、世界の料理についてこれほどのスケールで取り組んだカラー写真付き出版物は、他にほとんどないと思うし(例外は英語版のペリプラス出版の世界の料理シリーズや、日本語の農文協の世界の食文化シリーズなど)、おおまかながらも、世界の食文化をまんべんなく理解できるのは確か。大きな本なのでかさばるのが難点ですが、食についてしっかり学びたい人におすすめです。
本の中にちりばめられたカラー写真は、今見ると古い絵葉書のような印刷状態ではありますが、そのアングルのみずみずしさにハッとすることも。それに、かつて誰もが簡単に海外を旅行できなかった時代に書かれた、執筆者の好奇心が伝わってくる躍動するような文章は、思わず引き込まれてしまいそうに(特に、記者たちの先祖の出身地であるヨーロッパ諸国の記事は、思い入れも違っていて秀逸です)。
「世界の料理」シリーズの日本語版は、江上料理学院の院長である江上栄子さんのお母様で、各国をめぐって勉強された経験もお持ちの、日本の料理研究家の草分け的存在である故・江上トミさんが監修されています。
シリーズ中の「日本料理」と「日本の行事料理」は、日本独自の編集・執筆によるもので、全国の郷土料理と四季の行事料理について、何とも愛情込めて綴られた2冊。スローフードなんて言葉がなかった大昔に書かれたこれらの本を読み返すと、日本の地方の文化を大切に守っていきたいなぁ、なんて気持ちになりますね。


↑シリーズでは、ヨーロッパ諸国が充実している。「オーストリア・ハンガリー料理」には、チェコなど東欧の一部も。「フランスの古典料理」は歴史読み物としてもおもしろい。冷戦時代に出された「ロシア料理」だが、ウクライナなどCISの共和国の記述もちゃんと含まれていて、驚いてしまう。


↑「太平洋・東南アジア料理」と「中国料理」は、それぞれ1冊では情報が足りない印象。「インド料理」は、35年以上も前にこんなに地方料理にも言及した本が出版されていたとは驚きだ。「中東料理」にギリシャ料理が含まれるのは、文化よりも料理的考察を優先して分類した結果か。「アフリカ料理」は、今も資料の少ない中で貴重な一冊だが、北アフリカの記述に弱いのが残念(アメリカでは、北アフリカ料理は、別途1冊で出版されている)。
日本語版では、フランスと日本のみ2冊に分かれている。また、シリーズに「ワインと酒」が含まれるのは、料理とお酒が切り離せない関係という証拠だろう。
各巻にはそれぞれ、レシピだけを取り出した、キッチンで便利な小さいブックレットがついている。上記のほか、「キッチンガイド」と、もう一冊(タイトル不明)で全23巻に。発売当時は書店での通常売りではなく、1冊ずつ配本されていたよう。

アメリカのタイムライム社では、この「世界の料理」シリーズに続き、79年からは「グッドクック(The Good Cook)」シリーズを出版。こちらは、肉や卵、チーズなど食材ごとに1冊ずつ解説したもので、この2つのシリーズはアメリカでは、「料理本コレクターのマストアイテム。特に後者は、図書館の必需品」といわれているそうです。
もし、今後、このシリーズの改訂版が出版されたら、もっと充実した内容になるでしょうね。そんな日が来てほしいと待ち遠しいのですが、反面、インターネットが普及するずっと昔に語られた、未知の国への興奮の余韻は、もう誌面に表現できないかもしれないとも思います。
ちなみにアメリカでは、日本語版として出版されたもの以外に
North Africa
Low Countries
Switzerland
Poland
Bulgaria & Romania
The Cooking of Provincial France
A Quintet of Cuisines
-アメリカ国内-
American Cooking
The Melting Pot
The North West
The Great West
The Eastern Heartland
New England
Creole & Acadian
Southern Style
が少なくとも出版されたそう。みんな欲しくなっちゃいますね!
■「世界の料理」シリーズを手に入れる方法■
さて、絶版になって久しいこの「世界の料理」シリーズですが、最近、地域の再開発や家屋の建て替えが増えてきたことに伴ってか(?)、古書として意外と市場に出回っています。
以下に、自分の体験をふまえて、主な入手方法をおおまかにまとめてみました。他の本を探すときも活用できると思います。
1.古書店をまわって探す
2.インターネットの検索で古書店の在庫を探す
3.ネットオークションで探す
1は、昔ながらのスタンダードな入手法。お近くの古書店や、神保町などにある料理書専門店をまわって、気長に探すやり方です。本の中身や傷み具合を、その場で手に取って調べられるのが利点(古い本ですので、状態がまちまちなのです)。書店では1冊ごとにバラで出ていることもありますし、全巻まとめて出ていることもあります。料理専門ではない一般古書店では、びっくりするほど安価で販売されているケースがあるようです。
2は、GoogleやYahooで検索して、ネット販売している古書店の在庫を調べる方法。私は、だいたい半分はこの方法で探しました。市場が日本全国に広がりますから、ぐっと手に入りやすくなります。ただし、書店によっては、売り切れた在庫を更新しないままでいる場合がありますので、メールや電話で確かめてみてください。
3は、ネットオークションの出品物を手に入れる方法。これも、今後何かのきっかけでこの本が爆発的なブームにならない限り(笑)、手に入れやすい手段だと思います。
オークションでは、1冊ずつ出品されることが多いですが、まとめて出品されることもあります。良心的な出品者は、本の状態を事前に写真付きで詳しく説明してくれていて、安心できます。
ただ、出品者が相場を知らない場合があるので、希望落札価格はまちまち。また、競争者なしにラクに手に入るときもあれば、20人以上の競争者を相手に火花を散らさねばならないときもあります。相場を知ってうまく利用してみてください。
いくつかあるオークションサイトの中で、「世界の料理」シリーズがもっともよく出回っているのは、Yahooオークション(通称ヤフオク)。オークションに出品されたときに自動メールが知らせてくれる、アラートに登録しておくと便利です。アマゾンにもユーズト本として出品されていることがありますが、本の専門店だけに、概して価格設定が高いようです。
Yahooオークションを含めた9つの主要なオークションサイトの出品状況がまとめてわかる、オークションの一括検索・落札価格・相場検索サイト「オークファン」は、重宝するツール。キーワード入力で現在の出品はもちろん、過去の出品傾向まで調べることができます。
ちなみに、ずっしりと重い本ですので、ネット書店、オークションとも1冊につきけっこうばかにならない送料が発生します。できればなるべく1つの店、1人の出品者からまとめて購入した方がよいと思います。
※価格の相場は、私の調べた限りでは、本の保存状態等によって下は1冊150円から上は5000円以上まで。平均して700?2000円程度。全巻もしくは何巻かでまとめて販売される場合も、1冊あたりの単価はほぼ平均価格の範疇に入るようです。
※ものによって、よく流通している本(例:日本料理、フランス料理など)と、希少本(例:カリブ海諸島の料理、アフリカ料理など)があり、希少本ほど割高で取り引きされる傾向があるようです。本の経年や流通程度などをふまえると、2000円くらいまでなら購入する価値はあるけれど、3000円以上では高すぎるというのが個人的な意見です。
こんな感じでしょうか。健闘をお祈りします!
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モットーは「食は最高のコミュニケーション手段のひとつ」。言語や習慣の違いを越えて"おいしい!"で人と人をつなぐ世界の料理の魅力を広めたい思いから、珠玉の料理を求めて、拠点の東京をはじめ、日本全国・世界各地のレストランや食スポット等を取材で飛び回っております。
このブログでは、レシピやお店、旅行など世界の食べ物の話題を幅広く紹介します。
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